車を使用していると、定期的に車検を受ける時期がやってきます。安全に使用するために必要なことですが、車検費用の金額に悩む人も多いのではないでしょうか。最近は車検費用を安く抑えられることから、「ユーザー車検」への関心も高まっています。
ユーザー車検を受ける場合、「陸運局」管轄の車検場に車を持ち込みますが、「陸運局」とはどのような場所なのでしょうか。
また「ユーザー車検」を受ける場合、知っておきたいポイントは何があるでしょうか。
この記事では「陸運局」の存在と、「ユーザー車検」のメリット・デメリット、車検当日に行われる検査内容について解説します。
目次
車検を行う陸運局とはどんな場所?
陸運局とは「地方運輸局」のことを指します。
陸運局はかつて「地方陸運局」という名称で存在しましたが、2001年の省庁再編の際、「地方運輸局」となりました。しかし、陸運局という名称が一般に根強く残っているため、現在もこの呼び方がされています。
この記事でも便宜上「陸運局」として表現しています。
陸運局でできること
運輸局では自動車に関する登録や車検証再交付だけでなく、鉄道や船舶・飛行機に関する手続き・施設の管理をしています。
自動車に関する手続きに絞ると、下記のようになります。
- 自動車の新規登録
- 変更登録
- 移転登録
- 抹消登録
- 番号変更
- 車検証の再交付
各手続きには、陸運局管轄の運輸支局や自動車検査登録事務所などに足を運ぶ必要がありますが、最近はインターネット対応している手続きもあります。
自動車の新規登録
ナンバープレートのない新車、または中古車は、番号登録をしないと公道を走れません。カーディーラーや中古車販売店で車を購入すると、業者側で新規登録してから納車されるので、この手続きをする機会は少ないでしょう。
変更登録
登録している車の所有者氏名や住所などが変わった場合、変更登録が必要です。婚姻などで名字が変わった際や引っ越しをした際に行う手続きとなります。
移転登録
移転登録は所有者の名義が変わった際に行う手続きです。売買や相続の際に必要となり、管轄が異なる陸運局からの転入を伴う場合は、ナンバープレートも変更となります。そのような場合は、番号変更の手続きも行いましょう。
抹消登録
登録している車の使用中止時や、廃車する場合の手続きとなります。乗らないけれど欲しい人が見つかれば売却・譲渡したい場合は、一時抹消登録も可能。また車の解体や国外への輸出には、抹消登録が必要です。
抹消登録の際、車検の有効期限が1ヶ月以上残っていれば、残り期間分の自動車重量税還付が受けられます。還付が受けられるようなら、還付の申請手続きをしておきましょう。
番号変更
管轄が異なる陸運局からの転出を伴う移転登録の際や、ナンバープレートを変更する際の手続きです。ナンバープレートが破損・遺失し、同一番号で再交付する際もこの手続となります。
車検証再交付
車検証を紛失した際の再発行手続きも、陸運局が行っています。また車検を受ける車検場も、陸運局の管轄部署です。
ユーザー車検のメリット・デメリット
先述した通り、陸運局では自分で車検を行う「ユーザー車検」ができます。ここからは、陸運局でユーザー車検を行うメリットやデメリットについて見ていきます。
ユーザー車検のメリット
車検費用の節約になる
ユーザー車検で一番のメリットは、車検費用の節約でしょう。
車検業者に依頼すると、車検に通るよう細やかな点検・整備をしてもらえますが、その分費用は高額になりがちです。
費用の中には車検場へ車を持ち込む手数料なども含まれます。
ユーザー車検ならこうしたコストを削減でき、車検費用が節約できます。
自動車についての知識が増える
ユーザー車検を受けると、自分で車検場まで車を持ち込み、各検査項目を確認することになります。事前の点検・整備を自分で行うなら、車についての知識も増えるでしょう。車の機械的な部分に興味のある人には、良い学習機会となります。
はじめは難しく感じるかもしれませんが、車を所有する限り、車検は定期的にやってきます。
繰り返すうちに、知識・技術が増え、手際も良くなるでしょう。
自動車に関する税金や保険、車検の仕組を学べる
車検の手続きを自分で行うため、ユーザー車検では費用の内訳を知る機会にもなります。車に関する税金や保険の仕組みに対しても、理解が深まるでしょう。
ユーザー車検のデメリット
平日の日中に運輸局へ車を持ち込まないといけない
車検場に車を持ち込み、車検を受けられる時間は、平日の日中のみです。
土日が休みの人は、車検のために休暇を取る必要があるでしょう。仕事が忙しい時期と車検の有効期限が重なってしまうと、ユーザー車検を受けるのは難しくなります。
手間や時間がかかってしまう
平日に自分で車を持ち込んで車検手続きを行うだけでなく、事前の点検・整備や車検予約も必要です。特に24ヶ月点検は専門知識や専用工具が必要なため、機械が苦手な人にはハードルが高いでしょう。
場合によっては別途、点検業者への依頼も検討しなければなりません。こうした手間や時間がかかってしまう点も、デメリットと言えるでしょう。
点検不足・整備不良で車検に通らない場合がある
万が一、車検が通らなかった場合、もう一度車検を受けることになります。
車検当日に問題箇所を是正し、合格できればよいのですが、1日に受けられる検査は3回まで。それでも車検に合格できない場合は、後日受け直すことになります。結局、車検業者へ依頼する方が楽に早く車検が終了する可能性もあります。
陸運局のユーザー車検の予約と流れ
ユーザー車検を受けるには、車検予約を行います。
電話でも予約できますが、国土交通省のホームページにある、自動車検査インターネット予約システムからも予約できます。
システムの利用・アカウント登録は無料です。
初めて利用する際は、IDやパスワード、必要事項を入力して新規アカウントの登録をします。
2回目以降は登録したIDを使ってログインできます。
ただし2年1ヶ月以上、システム利用がない場合、ID登録が抹消されるので、改めて新規アカウントの取得が必要です。
システムへのログイン後、車検を受ける地域や検査内容、車種を選択し、予約できる時間帯を確認。
空いている時間を選び、住所・氏名・連絡先などを入力し仮予約後、予約内容を確認してから正式予約となります。
ユーザー車検の検査内容
予約当日、陸運局管轄の車検場へ車を持ち込み、検査官の指示のもとユーザー車検が行われます。各項目を順番に確認し、検査結果は自動車検査票と呼ばれる用紙に記録します。
同一性の確認
はじめに車検コースの入口で、車検証や申請書類の記載内容と、車両が同一であるかの確認があります。検査官に車検証などの必要書類を渡し、車のボンネットを開けましょう。車両とエンジンに打刻された車体番号や型式に相違ないか、車検証の記載内容から変更や改造がないかを確認されます。
外回り検査
検査官の指示に従い、車の外観部分の検査をします。外観の傷・凹み、各ライトの点灯、タイヤの状態などを確認し、問題なければ検査用コースでの検査に移ります。
サイドスリップ検査
検査用コースの中で、前輪タイヤの横滑り量を計測します。コース上にタイヤを合わせ、鉄板上のラインに沿ってまっすぐ走行。前方の電光表示機に「○」の表示が出れば合格です。
ブレーキ検査
コース前方の電光表示機の指示に従い、前輪・後輪・駐車ブレーキの制動力の確認です。コース上のラインに合わせてゆっくり全身し、4輪をテスターの上に乗せたら、エンジンを切らずにギアをニュートラルに入れます。
4輪が指定位置に乗るとテスターが沈み、ブレーキ検査がスタート。電光表示機の指示通りにブレーキを踏み、問題なければ「○」が表示されます。
スピードメーター検査
実際の速度とスピードメーターの表示速度の誤差確認をします。電光表示機の指示に従い、スピードメーターを40キロまで上げましょう。事故を防ぐため、このときハンドルは真っ直ぐにし、しっかり握っておきます。
スピードメーターが40キロを指したら、パッシング。誤差が基準範囲内であれば「○」が表示されます。
ヘッドライト検査
外回り検査の際、ヘッドライトの点灯確認をしていますが、ヘッドライト検査では、ライトの光量や光軸が基準値を満たしているかの確認になります。
電光表示機の指示に従い、ヘッドライトをロービームで点灯。光量・光軸が基準範囲内であれば、「○」が表示されます。
排気ガス検査
車の排気ガスに含まれる一酸化炭素および炭化水素の濃度を、排出ガス検査機器で確認します。
問題なければ前方の電光表示機に「○」が表示され合格です。
下回り検査
オイル漏れなどの車両下部に不具合がないかの確認です。中央が空洞になった検査機器の停止位置に前輪を乗せ、エンジンを切ります。ギアはニュートラルかパーキングにし、駐車ブレーキは引きません。
検査が始まると車が左右に揺れ、前方の電光表示機に指示が出ます。ブレーキを踏む、サイドブレーキを引く等の操作を行い、電光表示機に「○」が表示されれば合格です。不具合があれば検査官から呼び出されるので、指示に従いましょう。
総合判定
すべての検査が完了したら、検査コースの出口にある総合判定ボックスへ、検査結果を記録した自動車検査票を提出。最終判定が行われ、問題なければ自動車検査票に合格の押印がされ、新しい車検証が交付されます。
もしも問題があった場合、問題箇所が記入されるので、是正し再度、車検を受けましょう。ただし1回の車検申請で、検査コースに入れるのは3回までとなります。
問題なく車検に通るには、事前の点検・整備が重要でしょう。
まとめ
陸運局は「地方運輸局」を指し、「地方陸運局」と呼ばれていた頃の名残で、今もその名称が使われています。
陸運局では自動車のナンバー登録や変更・移転・抹消などの手続きのほか、車検証の再交付も対応。車検を受ける際に車を持ち込む、車検場は陸運局の管轄です。
ユーザー車検には車検費用を抑え、車の知識が増えるなどのメリットがありますが、受けられるのは平日日中のみ。忙しい人や、機械の点検整備に自身がない人にはハードルが高いでしょう。また車検に通らなかった場合、二度手間になる可能性もあります。
ユーザー車検を受けるには事前に車検場の予約をし、当日自分で車を持ち込みます。検査官の指示に従い、必要書類の提出や車の操作をして、各種検査項目を確認。問題なければ合格となり、新しい有効期限の車検証が交付されます。
ユーザー車検に合格するには、事前の点検・整備が重要です。